Flashback Dropの検証④(最終回)

Flashback Dropのまとめ

Flashback Dropに関して、基本機能と容量管理について簡単な検証で確認をしたが最後におさらいをする。

  • Flashback DropはRECYCLEBIN初期化パラメータがON(デフォルト)の場合に有効な機能であり、OFFの場合はOracle9iまでと同じ動作となる。
  • テーブルをPURGEオプションなしでDropすると、テーブルは物理的に削除されずにリサイクルビンで管理される。これはリサイクルビン用の表領域に移動されるのではなく、同じ表領域のままデータ・ディクショナリから見えなくなるような仕組みで管理されることを意味する。
  • リサイクルビンで管理されているテーブルは「BIN$」で始まる名前にRenameされる。
  • テーブルに紐付くインデックスおよびPK制約もリサイクルビンで管理される対象であり、同様に「BIN$」で始まる名前にRenameされる。
  • FK制約はDropとともに削除される
  • FLASHBACK TABLE <テーブル名> TO BEFORE DROP文でリサイクルビンにあるテーブルを削除直前に復元することができる。(名前は特に指定しないかぎり元に戻る)
  • 同時にインデックスとPK制約も復元される。(ただし名前は「BIN$」で始まる名前のまま。)従って一意制約は有効であり重複行をInsertしようとするとエラーになる。
  • FK制約は削除されているので復元されることはない。
  • リサイクルビンで管理されているオブジェクトは、セグメントを解放しない状態で表領域内に存在している。
  • 療養域の空きがなくなるまでセグメントは解放されないが、新たなオブジェクトのために領域が必要になると、削除時のSCNが古いセグメントから解放される。
  • この動作はユーザの操作を必要とせず自動的に行われる。

Flashback Dropは使える機能なのか?

上で述べたとおりFlashback Dropはデフォルトで使用できる機能であるが、積極的にオフにすべきなのだろうか?

検証した限り、私にはオフにする正当な理由が見つからない。というかオフにしてはいけない機能だと思う。

ところが、最近Amazon RDSでOracle11gR2 SE1環境をお試しで構築したところ、Recyclebin初期化パラメータが「OFF」になっていた。

パラメータグループを作成し、デフォルト値の「ON」に変更することは可能なはずなので問題はないのだが、なぜこのような設定値になっているのかは不明だ。

現行踏襲の呪縛

この検証シリーズは、JPOUG Tech Talk Night #6のライトニングトークで披露させていただいたネタなのだが、その中でこの「現行踏襲の呪縛」という言葉に対する反応が意外によかった。

つまり、アップグレードで多くの新機能が使えるようになっても、「新たなバグを引きたくない。」というような消極的な理由から、新機能を使わないということが現場では非常に多い。

「新機能にむやみに飛びつくのは素人だ。」と言わんばかりにベテランDBAが結果として間違った方向にミスリードし、小さな問題を大きくしてしまうとすればこれほど残念なことはない。

  • マニュアルをよく読んで誤解をしない。
  • 自分で検証して内部動作・仕様を確認する。

こういうことを怠って、自分の思い込みだけで判断するから、技術の進歩を素直に認めない空気が醸成されるのだ。

もう20年近く前のことで私がまだ経験の浅いエンジニアだったころ、Oracle Master の保有率が国内トップクラスというある開発会社に転職した時の話である。

「ウチの会社では外部キー制約は使わないことになっているから」と言われて面食らった。

リレーショナル・データベースというのものを正しく理解せずに実装しているシステムがどんな結末をたどるか、ということをこの会社にいる間に身をもって経験した。

ある地方におけるプロジェクトが炎上し、何人もの在京エンジニアが投入されたが皆討ち死にするような状況となった末、その会社は遠方で苦しんでいるメンバーに対し、残りの社員全員で励ましの寄せ書きを送ることにした。

今思えばとんでもないブラックな会社だったと思うが、強烈な違和感を持った私はやがて別の会社に転職をした。

その決断は間違っていなかったと確信している。

おまけ

大事なことを忘れたのだが、この検証はWindows7 64bit環境で以下のバージョンで実施した。

SQL> select banner from v$version;

BANNER
------------------------------------------------------------
Oracle Database 12c Enterprise Edition Release 12.1.0.2.0 -
64bit Production

PL/SQL Release 12.1.0.2.0 - Production
CORE    12.1.0.2.0      Production
TNS for 64-bit Windows: Version 12.1.0.2.0 - Production
NLSRTL Version 12.1.0.2.0 - Production

10gではメタデータがリサイクルビンに残っていた?

古い話だが、Flashback Dropが出た10gでは不思議な仕様だった。

以下は、オペレーション・ログからの抜粋だが、リサイクルビンの中で一番古いオブジェクトのUSER_RECYCLEBIN.SPACEが「0」のものがあることに気がついた。

試しにこのテーブルをフラッシュバックしたところ、テーブル構造(メタデータ)が復元されたにも関わらずデータが0件だった。

SQL> select ORIGINAL_NAME,TYPE,SPACE from user_recyclebin
  2  where CREATETIME = (select min(CREATETIME) from user_recyclebin);

ORIGINAL_NAME                    TYPE                           SPACE
-------------------------------- ------------------------- ----------
TABLE********                    TABLE                              0
INDEX************                INDEX                              0
PK_*************                 INDEX                              0

SQL> flashback table TABLE******** to before drop rename to TABLE********_RCV;

フラッシュバックが完了しました。

SQL> desc TABLE********_RCV
 名前                                        NULL?    型
 ----------------------------------------- -------- ------------------
 COL1                                      NOT NULL NUMBER(22)
 COL2                                               NUMBER(22)
 COL3                                               NUMBER(22)
 COL4                                               DATE
 COL5                                               DATE
 COL6                                               NUMBER(22)
 COL7                                               DATE

SQL> select * from TABLE********_RCV;

レコードが選択されませんでした。

よくよく確認したところ、メタデータが5万件以上もリサイクルビンに溜まっていた。

どうやら夜間バッチ処理の中でDROPを沢山発行していたようだった。(9iからのスクリプトでPURGEオプションなしでDROPを実行していた。)

これをPURGE RECYCLEBINコマンドで一気に削除したのだが、わずか数秒で終わってしまった。

今では見ることができない不思議な現象だった。

終わり