月別アーカイブ: 2016年4月

日韓自転車事情比較

3回目の韓国旅行

相変わらず更新が滞っているがまたも自転車ネタ。

実は2週間前に妻と2人で韓国旅行に行って来た。今回の旅行は事前予約が必要な故宮ツアーおよびドラマのロケ地ツアーへの参加という100%妻の意向に沿ったもので、私は特に目的を持っていなかったのだが、折角なので旅の途中で目にした韓国の自転車事情を書いてみようと思う。

タイトルは大げさだが、今回は1秒も自転車に跨っていないのですべて目にしたことだけである。

日韓自転車置き場の比較

ドラマのロケ地ツアーというのはガイドさんの車に乗ってあるドラマのロケ地をひたすら巡るという、興味のない人にとっては本当にどうでもよいツアーなのだが、名所旧跡を回るツアーでは絶対に行くことのない普通の町並みを見るので韓国の飾らない日常生活を見ることができて興味深い。

写真はドラマの主人公が住んでいるという設定のマンションだが(ソウルでもかなり高級なマンションの部類に入るらしい)自転車置き場が併設してあった。

ソウルの高級マンション

マンションの駐輪場

パイプを曲げただけの簡単なバイクスタンドが並んでいる。このタイプの駐輪場は本当によく見かけた。

次は、主人公が教授を勤めるという設定の大学にあった自転車置き場である。(場所は仁川(インチョン)市内にある実在の仁川大学で当日は土曜日だったが、ガイドさんの案内で大学構内までズカズカ入って行くことができるのが驚きである。)

仁川大学の駐輪場

このように韓国の大学では建物の入り口付近にはこれくらいの規模の自転車置き場がほとんど併設してある。

自転車にスタンドは付かないのが普通

ロードバイクを買った人は誰でも知っていることだが、重量を気にするロードバイクは走る時に無駄なだけのスタンドを付けることはほとんどない。マウンテンバイクやクロスバイクでは一時的に使う簡易的なスタンドを付けることはある。

一方、頑丈に作られている日本のママチャリはロードバイクの倍以上の重さとなることもあるので(最近人気の電動アシスト自転車ではなおさら)、駐輪時に転倒しないよう頑丈で重いスタンドが必須である。

スタンドが頑丈だと平らなところがあればどこにでも駐輪できてしまう。

ママチャリをどこにでも駐輪できなくすれば放置自転車は解決!?

朝日新聞の報道によると(「自転車などの放置台数、赤羽駅がワースト 都調査」2016.4.20)都内の駅周辺に放置された自転車などの台数は、 2015年計3万7004台だったらしく、最悪の赤羽駅(645台)周辺では土日を含む月4回の撤去作業を行っているそうである。まさにいたちごっこである。

日本における駅周辺の駐輪場は単に白線で枠を書いて「この中に駐めろ」的なものが多いが、これでは雑然としてしまうのが常である。我が家の近くの駅前駐輪場では平日朝3人位の係員が自転車を整列するためだけに働いている。(反面休日の無秩序さは酷いものだ。)

もし、韓国でよく見かけたタイプのバイクスタンドがもっと普及していたら放置自転車問題はかなり改善されるのではないか。最近スーパーマーケットの駐輪場にはこの手のタイプの駐輪場が増えてきているように思うが、バイクスタンドが等間隔で並んでいるので見た目整然としている。これが駅前駐輪場にももっと普及すればよいのではないか。

自転車に頑丈なスタンドが付いているおかげで放置自転車問題が起きているような気がする。

仁川(インチョン)市内の自転車専用道路

仁川市内の自転車専用道路

今回の旅行で最も衝撃を受けたのが上の写真の自転車専用道路である。韓国の車は右側通行だが仁川市内で見たこの自転車専用道路も上下2車線あった。写真ではわかりにくいが右側の緑地帯のさらに右には歩行者のための歩道がある。つまり、自動車、自転車、歩行者が完全に分離されている。

以前テレビで北欧の自転車大国デンマークで同じような道路を見たことがあるが、まさか韓国で見るとは思わなかった。仁川市は仁川国際空港開港と共に発展してきた比較的新しい街だが、少なくとも自転車行政はかなりまともに機能している。

日本の自転車道路事情

日本の行政にはもっと頑張って欲しいという思いがあるので、あえて日本の自転車事情の問題点を指摘する。

下はJR新橋駅付近の歩道で撮った写真である。どうやら歩道の車道側半分を自転車、反対側を歩行者で仲良く分け合って使いましょう、というような意図を感じる標識が立っているが、当然のことながら歩行者の誰も標識を見ていない。しかも左側の「自転車通行可」の青い標識には「歩行者優先」と書いてある。

歩道でも車道でも自転車は邪魔者扱いだ。

新橋駅付近の歩道

次の写真は隅田川にかかる東京都中央区の佃大橋の歩道に上がるための(自転車専用)通路の折り返し地点で撮ったものだ。歩行者用には階段が別にあるのでベビーカー、車椅子以外で自転車と競合するものはないはずなのだが、このように目立つ注意書きが貼ってある。

見ていると自転車はかなり通るのだが50mくらいの通路で律儀に自転車を降りて押している人はほとんどいない。行政側としては事故があった場合の管理責任を逃れるためにこんな注意書きを出しているのかもしれないが、本当に自転車に乗る人の身になって考えているか疑問である。

自転車は降りて

下は江東区豊洲付近の歩道の写真である。この辺りの歩道は十分に広くて開放感があるのだが、せっかく色を変えて自転車と歩行者の境界を分けようとしているのであれば、仁川のように自転車専用道路を設けて欲しいものだ。

日本の行政には自動車、自転車、歩行者を分離するという発想が完全に抜けている。

豊洲付近の歩道

日本にはまともな自転車道路がないのかとあきらめかけていたのだが、江東区有明付近で車道、歩道と分けられた自転車専用道路を見つけうれしくなって思わずシャッターを押した。(正面に見えるのは建設中の豊洲市場である。)

ご覧のとおりほとんど歩行者が通らない道だが、是非このような道路を街中にも普及させてもらいたいものである。

IMG_9705

道路が突然陥没したとか、違法改造して重心が高くなったフェリーが転覆して沢山の人が亡くなったとか、韓国の交通インフラにはありえないことが多いが、自転車の環境においては我々は素直に見習うべきことが多いように思った。