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書籍紹介:UMLモデリング入門

UMLモデリング入門UMLモデリングを本質から学ぼうと思って買ったのがこの本です。 UMLモデリング入門(児玉公信著、日経BP)

入門と言いながら全編大学の講義を聞いているような記述が並びますが、そもそも「情報システムとは?」「概念とは?」などの本質に直球勝負で切り込んでいくスタイルはじっくり読みこなしていくと必ず腑に落ちます。

下図は「1-2 情報システムライフサイクル」において、著者が考える情報システム構築プロセスを表したものですが、本書の目的はこの中の「要求設計」で業務のあり方を記述する「概念モデル」であると明確に言い切っています。

つまり施主(情報システムによって利益を受ける人)の漠然とした期待をまとめた原要求に対して、ITによって機能だけでなくビジネス・組織・仕事についても設計し「要求(つまり概念モデル)」を作り上げるという設計者およびアーキテクトの役割を解説する本だという認識を持って読めば自ずと理解が深まるのではないかと思います。(この図をみればアーキテクトとはどのような人なのかがわかるでしょう。)

また、筆者はこの図を使って、アジャイルな開発プロセスとは「設計者=施工者」であり要求設計と同時にソフトウェアの仕様ができることであり、結果として現場の生産性を上げるものであると説明しています。つまり設計することなしの「現場合わせ」の繰り返しはアジャイルではないという言葉は非常に説得力があります。

情報システムライフサイクル.001

単なるUMLモデリングの解説本ではなく、モデリングの本質に踏み込んだ良書です。

書籍紹介:DAMA-DMBOK Guide

品川区立大崎図書館で借りてきました

一昨日の記事 DOAって和製英語? でも触れましたが、データマネジメント知識体系ガイド 第一版 が、よく利用する品川区立大崎図書館にあったので早速借りてきました。

データマネジメント知識体系ガイド 第一版

DAMA-DMBOKとは、The Data Management Association Guide to The Data Management Body of Knowledge です。


章立て

章立ては以下のようになっています。(5章のみ詳細に紹介します。)

  1. イントロダクション
  2. データ管理概要
  3. データガバナンス
  4. データアーキテクチャ管理
  5. データ開発
    1. はじめに
    2. 概念と活動
      1. システム開発ライフサイクル(SDLC)
      2. データモデリングの表現方法
      3. データモデリング、分析、ソリューション設計
      4. 詳細データ設計
      5. データモデルと設計の品質管理
      6. データ実装
    3. まとめ
    4. 推奨文献
  6. データオペレーション管理
  7. データセキュリティ管理
  8. リファレンスデータとマスタデータ管理
  9. データウェアハウジング(DW)とビジネスインテリジェンス管理(BIM)
  10. ドキュメントとコンテンツ管理
  11. メタデータ管理
  12. データクオリティ管理(DQM )
  13. 専門家の養成
  14. おわりに

構成と目的

章立てを見ればわかるように、第2章でデータ管理の概要に触れ、第3〜12章でデータ管理における10の機能をそれぞれ説明しています。

このドキュメントの目的については「1.11 DAMA-DMBOK Guideが目指すゴール」に記述があるので紹介します。

  1. 一般的に適用可能なデータ管理機能の見識についてコンセンサスを構築すること。
  2. 一般的に使われているデータ管理機能、成果物、役割、その他用語について、標準となる定義を提示すること。
  3. データ管理の基本原則を明確にすること。
  4. 広く受け入れられている優良事例、幅広く採用されている手法や技法、重要な代替的アプローチを、特定のベンダーの技術や製品に言及することなく概観すること。
  5. 組織や文化にまつわる一般的な問題について簡単に説明すること。
  6. データ管理の対象範囲と境界を明確にすること。
  7. 理解をさらに深めるための追加資料を読者に紹介すること。

専門家の養成 〜データ管理を天職とする〜

イントロダクションにも記述がありますが、DMBOKはPMBOKを参考にまとめられているそうです。13章には1章を丸々あてて「専門家の養成」についてまとめてあります。

そこには、

  • データ管理はIT分野における正当な専門的職業である。
  • 専門的職業は、特殊な知識と技能を要する職業的使命(天職)、またはその天職に携わる人のあつまりとして定義される。
  • データ管理専門家は、資源としてのデータの重要性に関して、何らかの使命感や責任を感じている。
  • この使命感や責任が、データ管理を「単なる仕事」ではなく「天職」とするのである。
  • 専門的職業の特徴として知識体系という共通認識が公表されている

とあります。

特に欧米でなぜBOKが重要視されるのか、それが専門家としての証であるからかもしれません。

この記事を書いている時、テレビのニュースではベネッセコーポレーションで起きた個人情報漏えい事件を報じています。情報を持ちだしたエンジニアにとって仕事は「単なる仕事」に過ぎなかったのでしょう。

どの国においてもモラル・ハザードは起き得ますし、それを防ぐ仕組みを作ることは必要です。ただし、知識体系をまとめることで専門家へ使命感や責任を求める、この発想は素晴らしい!

我々日本人としてはBOKの翻訳をただ受け入れるのではなく(多くの場合本棚に眠っていることになりかねない)、エンジニアが自らの行動規範を作るための拠り所として活用すべきであると考えます。

P.S. 先日書いたDOAという言葉がDMBOKにあるかざっと探してみましたが見当たりませんでした。