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書籍紹介:DAMA-DMBOK Guide

品川区立大崎図書館で借りてきました

一昨日の記事 DOAって和製英語? でも触れましたが、データマネジメント知識体系ガイド 第一版 が、よく利用する品川区立大崎図書館にあったので早速借りてきました。

データマネジメント知識体系ガイド 第一版

DAMA-DMBOKとは、The Data Management Association Guide to The Data Management Body of Knowledge です。


章立て

章立ては以下のようになっています。(5章のみ詳細に紹介します。)

  1. イントロダクション
  2. データ管理概要
  3. データガバナンス
  4. データアーキテクチャ管理
  5. データ開発
    1. はじめに
    2. 概念と活動
      1. システム開発ライフサイクル(SDLC)
      2. データモデリングの表現方法
      3. データモデリング、分析、ソリューション設計
      4. 詳細データ設計
      5. データモデルと設計の品質管理
      6. データ実装
    3. まとめ
    4. 推奨文献
  6. データオペレーション管理
  7. データセキュリティ管理
  8. リファレンスデータとマスタデータ管理
  9. データウェアハウジング(DW)とビジネスインテリジェンス管理(BIM)
  10. ドキュメントとコンテンツ管理
  11. メタデータ管理
  12. データクオリティ管理(DQM )
  13. 専門家の養成
  14. おわりに

構成と目的

章立てを見ればわかるように、第2章でデータ管理の概要に触れ、第3〜12章でデータ管理における10の機能をそれぞれ説明しています。

このドキュメントの目的については「1.11 DAMA-DMBOK Guideが目指すゴール」に記述があるので紹介します。

  1. 一般的に適用可能なデータ管理機能の見識についてコンセンサスを構築すること。
  2. 一般的に使われているデータ管理機能、成果物、役割、その他用語について、標準となる定義を提示すること。
  3. データ管理の基本原則を明確にすること。
  4. 広く受け入れられている優良事例、幅広く採用されている手法や技法、重要な代替的アプローチを、特定のベンダーの技術や製品に言及することなく概観すること。
  5. 組織や文化にまつわる一般的な問題について簡単に説明すること。
  6. データ管理の対象範囲と境界を明確にすること。
  7. 理解をさらに深めるための追加資料を読者に紹介すること。

専門家の養成 〜データ管理を天職とする〜

イントロダクションにも記述がありますが、DMBOKはPMBOKを参考にまとめられているそうです。13章には1章を丸々あてて「専門家の養成」についてまとめてあります。

そこには、

  • データ管理はIT分野における正当な専門的職業である。
  • 専門的職業は、特殊な知識と技能を要する職業的使命(天職)、またはその天職に携わる人のあつまりとして定義される。
  • データ管理専門家は、資源としてのデータの重要性に関して、何らかの使命感や責任を感じている。
  • この使命感や責任が、データ管理を「単なる仕事」ではなく「天職」とするのである。
  • 専門的職業の特徴として知識体系という共通認識が公表されている

とあります。

特に欧米でなぜBOKが重要視されるのか、それが専門家としての証であるからかもしれません。

この記事を書いている時、テレビのニュースではベネッセコーポレーションで起きた個人情報漏えい事件を報じています。情報を持ちだしたエンジニアにとって仕事は「単なる仕事」に過ぎなかったのでしょう。

どの国においてもモラル・ハザードは起き得ますし、それを防ぐ仕組みを作ることは必要です。ただし、知識体系をまとめることで専門家へ使命感や責任を求める、この発想は素晴らしい!

我々日本人としてはBOKの翻訳をただ受け入れるのではなく(多くの場合本棚に眠っていることになりかねない)、エンジニアが自らの行動規範を作るための拠り所として活用すべきであると考えます。

P.S. 先日書いたDOAという言葉がDMBOKにあるかざっと探してみましたが見当たりませんでした。

 

DOAって和製英語?

先日のITアーキテクト養成講座で講師のNRI石田さんと話していて初めて知ったのですが、「DOA:Data Oriented Approach(データ指向(あるいは中心)アプローチ)」という言葉は欧米のアーキテクトには通じないそうです。

データベース設計を少しでもかじった経験のある人ならば、このDOAという言葉はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
手元にある本を見ても プロとしてのデータモデリング入門(P.2)、楽々ERDレッスン(P.86)、業務システムのための上流工程入門(P.61)にはいずれも数ページをさいてDOAについて解説してあります。

確かに「xOA」という3文字略語はIT業界ではしばしば目にしますが、SOAにせよOOAにせよ「A」は「Architecture」あるいは「Analysis」であって、「Approach」というのはあまり聞きません。むしろ和製英語の香りがプンプンします。

ここでこんな話を持ちだしたのは、和製英語だからダサいとか、米国発の情報がいつも正しいということを言いたいのではなく、むしろ今までいろいろな開発プロジェクトを見てきて、データを中心に考えているそれらは非常にうまく行っているケースが多いという事実を再認識したいのです。

欧米ではBOK:Body Of Knowledgeと呼ばれる特定領域の知識体系を定義する概念なりドキュメントが充実しています。IT業界に関係するBOKとしては以下のようなものがあります。

  • BABOK(ビジネス・アナリスト向け知識体系)
  • PMBOK(プロジェクト・マネジメントの知識体系)
  • SWEBOK(ソフトウェア・エンジニアリングの知識体系)

各領域の最適化がBOKによって担保されたとしても、最終的にシステムとしての全体整合性の責任は誰が持つのでしょうか?それこそがITアーキテクトなのではないかというのがITアーキテクト養成講座の目指すところであるとの説明を聞き大いに納得した次第です。となるとITアーキテクトという考え方自体が「和をもって尊しとなす」日本発の概念なのではないかとも思いました。

P.S. 実はデータ管理にも「DMBOK:Data Management Body of Knowledge」なるものがあります。こんな本も出ているようです。データマネジメント知識体系ガイド 第一版 (データ総研監訳)手元にないので今度探してみたいと思います。